Nozomi side


「俺さ……。希(ノゾミ)の事好きかも」


学校の屋上。
涼しくて髪を静かに揺らす風。
いつもと変わらない風景。


でも。


今日は違った。


「え?」


あたしの横で突然そう口にした吉馬(キツマ)。
想像もしていなかった言葉にあたしは吉馬を見つめた。


「今まで友達として一緒にいたけど、何か……気付いたら目で追ってて。気付いたら好きになってた」


吉馬はそう言ってあたしから視線を逸らした。


吉馬……が。
あたしの事好きだったの……?


あたしはびっくりして声が出なかった。


そもそもあたし・稲美希と。
こいつ……相良吉馬との出会いは、1年前の入学して間もない頃。




1年前……春。


「嘘でしょ〜?」


放課後、友達の沙耶と遊ぶ約束してて、バックに荷物を詰めてた時だった。


何で何で?
何でウォークマンないのぉ!?


電車通学してたあたしの愛用していたバックに入れていた筈のウォークマンがない!


「あれ……親からの誕生日プレゼントだったのにぃ……」


涙目になりながらバックに視線を落としていると、沙耶が近づいてくる。


「ホントにないの?家に置いてあるとか……違うとこに入れたとかはないの?」