この声は…彩花?


だんだん近づいてくるにつれて、やっぱり彩花だと分かった。


「あ、彩花?」


「もう美鈴ったらいきなり逃げることないでしょ?心配したんだから!」


「だって…彼氏とかいき…」


「じゃあ、俺行くから」


あたしの言葉を無視して、男はそう言って去っていった。


「あっ、ありがとぉ――!」


彩花は男の背中に向かってお礼をした。


男の姿が見えなくなると、あたしは周りをキョロキョロ警戒しながら言った。


「彩花…彼氏は…?」


「あぁ、今は違う所で待っててもらってる。一輝、いきなり手叩かれて逃げられたって落ち込んでたわよ?」


「う゛…で、でも!何でこんな所で彩花の彼氏紹介するのよ!あたしが男嫌いだって知ってるくせに!」


あたしは、反論を試みた。


「楓君とメールして随分経つから、大丈夫かなって思ったんだけどな~」


彩花は難しい顔をしてそう言ったけど、急に笑顔になった。


「でも!やっぱり楓君は大丈夫だったわね♪」


「え、楓君って…どこにいるの?」


あたしは、また周りをキョロキョロした。