途中で何度も知り合いに声をかけられて、その都度足止めを食らった。


ようやく校舎裏に着くと、そこには見覚えのある姿が……


「…美鈴?」


「あ、楓君。」


「何でこんな所に美鈴が?」


「うん…いきなり彩花に腕を掴まれて…着いた先がここだったの。」


またアイツ等の仕業か……


「…でも、懐かしいな。文化祭の時以来だもん!」


“文化祭”


その言葉を聞いて、思わず吹き出した。


「えっ、何で笑うの?」


キョトンとした顔で、俺を見つめる美鈴。


「ホント懐かしいなぁ~♪特に誰かさんが男装してたのは!」


俺がわざとらしくそう言うと、美鈴は一瞬考えてから一気に顔を赤くした。


「…その話は忘れてよ!」


「やだねッ♪そんな強烈なこと、忘れようにも忘れらんねぇよ!」


「……楓君の意地悪!」


そう言いながら、美鈴がポカポカと叩いてきた。


全然痛くねぇし!


俺はそんな姿を愛しく思いながら、ずっと笑っていた。


突然美鈴が叩くのを止めて、下を向いた。


????


俺も笑うのを止めて、美鈴の顔を覗き込んだ。


何故か美鈴は静かに泣いていた。


「わ、わりぃ!そんな嫌だった?」


慌てて泣き止ませようとオドオドした。


そんな様子も全く気にしてくれず、美鈴は目に涙を溜めたまま俺を見上げた。


「楓君、大学の近くでアパート暮らしだよね?」


「…お、おぅ。」


そんな美鈴がちょっと色っぽくて、心拍数が一気に上昇した。


「4月になったら、こうやって会いたい時でも会えなくなっちゃうんだね…。寂しいな…大学には可愛い子いっぱいいるだろうし…」


そう言いながらまた下を向いた。


…何、そのめっちゃ可愛いセリフ。


俺は思わず、力一杯美鈴を抱き締めた。