「…あ、うん!大丈夫だよ。」


「…ホント?」


楓君が目を丸くした。


「うん!だって、指輪と楓君が両サイドから守ってくれてるもん♪」


あたしがそう言うと、楓君は少し恥ずかしそうに笑った。


その時…


ゴ――――ン…


除夜の鐘が鳴り出した。


「あっ、12時…」


「あ~あ!お詣りする前に明けちまったな…」


あたし達は、何だか可笑しくてお互いを見て吹き出した。


「……………あ」


笑っている途中で、楓君が何か思い出したように声を出した。


「…どうしたの?」


不思議に思って、楓君を見上げる。


「…………」


楓君にはあたしの声が届いていないみたいで、何も言わずに黙り込んだ。


ただ何故か、表情からは焦りが見て取れる。


どうしたんだろ…?


あたしが楓君に釘付けになっていると、肩に何かがぶつかったような衝撃があった。


「きゃっ!」


思わず声を出して、顔を上げると……


あたしを睨む、1人の男が目についた。


ゾク…ッ!


体を電気が走り抜けたような感じがした。


男は少しの間ジッと睨んでから、さっさと歩いていった。


「…は?大丈夫かっ!?」


さっきとは少し違う焦りを顔に浮かべて、楓君はあたしを覗き込んだ。