「キスぐらいしたのよね?」


………やっぱり。


「…ハァ~。」


「…何よ?」


あからさまに落胆の意思を表すと、彩花が少しムッとして言った。


「だって…パパとママもそうだったんだけど、何でそう何かを求めるかな?あたしは、楓君と一緒にいられるだけで十分満足なのに…」


「甘い!」


いきなり彩花が、ビシッと指を突き出して言った。


「な、何で?」


「ただ一緒にいるだけなら、友達だって同じじゃない!付き合うってことはそうじゃないのよ?どうせあんた達のことだから、手だって繋いでないんでしょうけど…」


「そりゃ~、繋いでないけど……でも!楓君だって楽しかったって言ってくれたもん!」


あたしがそう言ったと同時に、携帯が鳴った。


すぐに確認すると、楓君から。


「誰から?」


「楓君っ♪」


「ちょっと見せな!」


「ちょっ!あたしだってまだ見てないのに~!」


ひょいっとあたしから携帯を取り上げ、暫し沈黙してから彩花はあっさりと携帯を落とした。


「わっ!危ないじゃん!」


寸での所で携帯を掴み、彩花を睨む。