「…やっぱ15年って長いよな。あの時は危なっかしくて泣いてばっかだったみっちゃんが、こんなに可愛くなったんだもんな。俺、その時から好きだったんだぜ?ガキだったから何も言えずに引っ越しちゃったけど…サッカースタジアムで会った時はすぐみっちゃんだって分かった。みっちゃんは分からなかったみたいだけどな」


星を見ながらそう話す圭君の横顔は、何だかすごく寂しそうに見えた。


「………圭君」


その姿に何て言っていいか分からないでいると、圭君があたしの方を向いた。


「俺…大学行くの辞めて、ブラジルに留学することにしたんだ」


「……え?留学?」


「あぁ。とことんサッカーと向き合っていこうと思ってさ。来週どんな感じかホームステイ先とか所属するチームの下見に行ってくるんだ。だから、またみっちゃんと会えなくなる。でも、最後に気持ちだけ伝えることできてよかった」


「…圭君。あの、あたし…」


あたしの言葉を最後まで聞かずに、圭君は言葉を続けた。


「みっちゃん!幸せになれよ?俺、みっちゃんが笑ってくれればそれで十分だから」


そう言われた瞬間、目に涙が溢れた。


「ほら、泣くなよ?笑っててくれなきゃ、俺安心できねぇじゃん。」


「ごめんね…圭君…」


「俺泣かすために、みっちゃん連れてきたんじゃないから!」


「うん、ごめん…」


その後あたしが泣き止むまで、圭君は何も言わなかった。


「よし、そろそろ帰るか!」


「…うん」


圭君が腰を上げ、先に降りていった。


「はい。みっちゃん、手!」


また降りるのを手伝って貰う。


そして、また元来た道をゆっくり戻った。