「…ホント!あの男も苦手部類に入るのかしら?」


彩花ちゃんのその発言に、淡い期待が胸を包む。


しかも…男が手を握ると、立川はその手を思いっきり払った。


それを見て、ますます踊る俺の心。


暫しの沈黙の後、気まずい雰囲気を漂わせたまま、二人は改札口を通っていった。


「…心配しなくても、大丈夫なんじゃね?立川あんな様子だし…」


「…まだ始まったばっかりじゃないの!ほら、あたし達も行くわよ!」


腕を引っ張られながら、立川達の隣の車両に乗った。


二人の会話は聞こえないけど、雰囲気からしてあんまりよくないらしい。


若干ニヤニヤしながら、心の中で男にざまーみろ!と言ってやった。


……今の俺、超性格悪いな。


そう思っていると、男が立川に何か言った。


すると、みるみる内に立川の顔から緊張が抜けていった。


そして、あろうことか男に笑顔を向けている。


「……え?」


思わずそう言うと、携帯をいじっていた彩花ちゃんが俺を見た。


「どうしたの?」


「…立川が……」


それしか言えなかった。


俺の顔から何かを察した彩花ちゃんは、慌てて二人を見て。


と、すぐに信じられないと言った表情をした。