12月始めの日曜日。


俺は家で黙々と勉強をしている…はずだった。


昨日まではそう思っていた。


しかし、今俺は彩花ちゃんと二人で電車に揺られている。


なぜこんなことになったかというと…


遡(サカノボ)ること、数十時間。


つまり、昨日。


俺は家で勉強の合間の休憩で、サッカーの雑誌を見ていた。


そこに、1本の電話。


俺はろくに相手も確認せずに、電話に出た。


「もしもし?」


『もしもし、楓君?』


……楓“君”?


俺は、勢い良く携帯の画面を見た。


…これ、一輝の番号だよな?


何で、女の声なんだ?


『もしもぉ~し?楓君?あたし、彩花!聞こえてる?』


何だ、彩花ちゃんか…


「…彩花ちゃんが何の用?」


彩花ちゃんからの電話には前に体験済みの俺は、焦ることなく対応することができた。


『一瞬美鈴かと思った?』


「なっ!思ってねぇよ!」


『アハッ♪その反応、まじ面白いわっ♪』


「…用がないなら切るけど?」


『あ、ちょっと待って!楓君、明日一日明けといてね!』


「…は?何で?」


『そりゃもちろん、美鈴をつけるため!』


「つける?…それ、ストーカーじゃん!」