『…多分、あたしの予想からすると…美鈴動揺してるわよ?』


「…動揺?」


『うん、動揺。美鈴は今まで楓君のことをお兄ちゃんだって思ってたみたいだけど…昨日のあれで、お兄ちゃんじゃないってことがはっきり分かったと思うの。でも、じゃあ楓君は一体どんな存在かって言われると、分からなくなってる。だから…攻めるなら、今が絶好のチャンスよ!』


「……俺には無理だよ。そんな駆け引きできない…」


『ちょ、ちょっと今何か行動起こさないと後悔するわよ!』


そんな声が携帯から聞こえるのを受け流し、俺は一輝に携帯を返した。


「…ハァ~~~~~~」


携帯を渡すと、今までで一番大きなため息をした。


「…まじへこんでるみたい」


一輝がそんな俺を見て、携帯の彩花ちゃんにそう伝えた。


その後、一輝はまた少し話をしてから、電話を切った。


「一言好きだって気持ち伝えちゃえば、楽になるのに…」


机に突っ伏していると、上から一輝の声が聞こえてきた。


「…それができないから、こうして落ち込んでるんだろ?」


「…そうゆうもんかね~」


いつの間にか誰もいなくなった教室で、一輝の呟きが響いた。