いつもの如くその迫力に負け、昨日あったことを全て話した。


「あんたどうだったの?楓君に抱きしめられて…」


「怖くはなかったけど…嫌だったかとかはよく分かんない…ねぇ、あたし変かな?お兄ちゃん的存在なのにドキドキしたのって…」


「変じゃないわよ。美鈴にとって楓君はどんな存在?」


「あたしにとっての…楓君?」


「そう。お兄ちゃん以外の言葉でね」


目を閉じてみた。


頭に浮かんできたのは…


サッカーをしている時の、真剣な顔。


文化祭で見た、目を細くして笑う顔。


試合を見に行った時の、不機嫌な顔。


そして…


昨日最後に見た、すごく悲しそうな顔。


楓君のことを考えたら、また胸がドキドキして苦しくなった。


「分かんない…分かんないよ」


「そっか。無理にこれって決めつけるのはよくないし…もう少しゆっくり考えてみな。ね?」


「…うん」


「じゃ、話変わるけど…」


「??」


「サッカー見に行った時に会った男っていうのは誰?」


「…?あぁ、圭君のこと?」


「そう、それ!あんた男嫌いなんじゃなかったの?」


「…うん。そうなんだけど…圭君、荒井圭吾君は幼稚園が一緒でね。その時はあたしも大丈夫だったから、すごく仲が良かったの。小学校上がる時に引っ越して行っちゃったんだけどね」