私は出入り口の奥からタバコの煙が漂っているのに気づいた。

少しだけ腕が見える。

手首に崚馬がいつもつけているブレスレットがあった。

「崚馬?」

崚馬が驚いてこっちに来る。

「わりぃ…聞くつもりなかったんだけど出づらくて…」

崚馬は気まずそうに言う。

「いえ…」

志帆ちゃんは顔を伏せる。

「名前は?」

「相田志帆です…」

「あんたが拓海の彼女か…。ったくあいつ何やってんだよ…」

崚馬は携帯を取り出して誰かに電話をかけている。

きっと拓海くんだろう。

しばらくすると拓海くんが慌ててきた。

「崚馬くん!…志帆?」

「お前ちょっと座れ」

拓海くんは志帆ちゃんの前に座る。

「相田、悩んでるみたいだぞ」

「え?」

「お前、まだ優梨のこと好きなのか?」

拓海くんは目を見開いて固まっている。

「いや…崚馬くんの彼女だし」

「俺の女じゃなかったら好きだったってことか?」