「マジで!?」

「マジで」

「何そんな騒いでんすか?」

拓海くんが入ってくる。

「昨日二組のカップルが誕生したんだよ!」

「二組のカップルって…えぇ!?優梨…慎司くんと付き合ったの…?」

「うん」

「マジかよ…」

休み時間、移動教室で拓海くんと志帆ちゃんと弘樹と歩いていると慎司さんと崚馬さんが人気のない廊下で話しているのが見えた。

「お前…ホントにそれでいいの?」

慎司さんも崚馬さんも真剣な顔だ。

いけないとわかっていながらもつい盗み聞きしてしまう。

「お前本気で優梨のこと好きなの?」

「あぁ」

「ぜってぇ幸せにしろよ…」

「お前はいいのかよ」

「…」

「優梨のこと好きなんだろ?」

「…俺は優梨を幸せにはできない」

「あの事件はもう終わったんだろ?」

「…」

「いいのかよ。俺は優梨からお前のこと忘れさせるつもりだけど」

「それでいいよ。こんなやつのこと忘れさせてやって」

「もういいよ。話にならねぇ…」

「わりぃ」

「崚馬くん!慎司くん!」

拓海くんが2人に駆け寄っていく。

「拓海!移動か?」

「はい!」

弘樹と志帆ちゃんも拓海くんの後に続く。

「優梨」

私も弘樹に連れていかれる。

「次は優梨の嫌いな音楽なんすよ!」

「音楽嫌いなの?」

「うん…。音痴だもん」

「そう?優梨は音痴じゃないよ」

「いや!音痴だよ!」

「拓海くん!」

「緊張してるときの顔やばいっすよ!」

拓海くんは思い出したように笑う。

「優梨ちゃんはいつだって可愛いよ」

「ありがとう志帆ちゃん」

「じゃぁな」

結局崚馬さんは一度も喋らなかった。

こっちを見てもくれなかった。

どういうことだったんだろう…。