「あの…慎司さんが私に優しくしてくれるのは…崚馬さんに頼まれたから…ですか…?」

慎司さんは驚いている。

「違うよ。ただ俺が優梨と一緒にいたいからいるだけ。崚馬はきっと俺らがよく一緒にいるの見てそんなこと言ったんだと思う。あいつ…優梨のこと好きなんじゃねぇかな。あいつには悪いと思ってるんだけど…俺は優梨を奪うつもりだよ。あいつからの連絡待つか俺のとこにくるか決めるのは優梨だけど。でも優梨が崚馬との幸せを望んでるなら俺は何も言わないよ」

それって…。

「私…最近慎司さんが一緒にいてくれてるおかげで少しずつ崚馬さんのこと考える時間減ってきてる気がします。ありがとうございます」

「それはよかった」

その夜、私はおつかいを頼まれて近くのコンビニに行った。

帰り道を歩いていると横に一台の黒い車が止まる。

恐怖を感じて走ろうとしたときにはもう遅かった。

車の中から手が伸びてきてがっしりと掴まれて車に連れ込まれそうになり私は必死でもがく。

「何してんだよ!!」

この声…。

崚馬さんが走ってきて車の中にいた人をひきづりだしてボコボコにしてしまった。

いつの間にか涙が溢れてきた。

「こんな時間に出歩いてんじゃねぇ!!」

「崚馬?その子誰?」

女の人が歩いてくる。

「…別に」

崚馬さんの困ったような目が私に向けられている。

どこか寂しそうな悲しそうにも見える崚馬さんの目。

「崚馬さん…ありがとうございました…」

私は震える声でそう言ってその場から走り去った。