「…!…梨!…優梨!!」

矢神さんの声でハッとする。

矢神さんが私の肩を揺すって心配そうに私の顔をのぞきこんでいた。

「…ごめんなさい」

私は走って屋上に行った。

涙が止まらない。

私たち…終わったの…?

崚馬さんの冷たい声が頭から離れない。

気づくと屋上の隅でしゃがんでいる私の隣に矢神さんがいた。

矢神さんは少し距離をおいたところにしゃがんで何も言わずにずっと隣にいてくれた。

「落ち着いた?」

矢神さんの優しい声。

「…はい。ありがとうございます」

「崚馬からだったんでしょ?何があったか話してくれる?」

「…別れようって…」

「は…?」

矢神さんは携帯をとりだして電話している。

崚馬さんにかけているのだろう。

「…この電話は使われてないって…」

解約したの…?

崚馬さん…。

私なにかしたのかな。

別れる理由がわからないよ。

「崚馬の家に行こう」

私は矢神さんの後ろをずっとついて行った。

着いたのは立派なマンション。

矢神さんがチャイムを押す。

しばらく待っても中に人がいる気配はなかった。

「いないか…」

私たちは外に出る。

「送るよ。授業受ける気にはならないでしょ?」

「…はい」

矢神さんに家の前まで送ってもらう。

「きっと何か理由があるんだよ。もう少し待ってみなよ」

「…はい」