キスされる
そう思って目をぎゅっと閉じた瞬間、岩崎が笑いだした。
「なんてね。冗談だよ」
「な…何だ」
力が一気に抜けて床に座り込んでしまった。
「ちょっと…岩崎、冗談きつ過ぎ」
「ごめんごめん」
笑顔で手を差し出されたので、恐る恐るその手を握った。
「でもね、ずっと好きだったのは本当。
一目惚れだったんだ。
でも…こんなタイミングで告白するって良くねぇな。
振られるのはもうわかってるから何にも言わないで」
相変わらず顔は微笑んだままだ。
この人は爽やかすぎる…
岩崎の純粋な気持ちに心が締め付けられた。
「岩崎…」
このまま甘えてしまいたい気もしたけど、ぐっと昂ぶる気持ちを押さえた。
「そんな切ない顔するなって。
とりあえず早く飯作ってよ。
先輩との話ならいくらでも聞くからさ」
「うん…ありがと」
岩崎の顔が一瞬赤くなったのは見なかったことにして、あたしは料理の支度に取り掛かった。