春眠暁を覚えず。

果たして、この言葉は何時知ったのか思い出せない。国語の授業を思いだし懐かしさを感じる。
そんな呑気なことを、一人暮らしの部屋で思う。何でそんなことを考えたのかというと春の陽射しがカーテンの隙間から差し込んできたからだろう。もう外の季節はすっかり春だ。

時計の短針は9と10の間を指している。そろそろベッドから出なければならない。頭が昨日から痛いから、病院に行きたい。病院に行くには着替えて、軽く化粧をして身仕度をしなければ。
わかっているが体が思うように動かない。頭に鈍い痛みと、激しい痛みが交互にやってくる。
こんなときに彼氏がいたら…と思ったが、その考えは頭からすぐに消去された。いないものを考えても時間の無駄である。


自力で近くにある真新しい外装の病院にやってきた。受付のお姉さんは忙しそうに私から保険証と診療カードを受けとり、問診票を渡してきた。私は問診票にペンを走らせたが、最後の項目でペンは止まった。


「妊娠の可能性はありますか?」


いやいや、無いですから。彼氏いないし。いたことないし。と、自嘲ぎみに雑に丸を付け、また受付に問診票を持っていった。


診察をしてもらうと、頭痛の原因は明確なものはなく、気圧の変化による偏頭痛ではないかという診断だった。防ぎようのなさに肩を落とすしかない。つまり、これから天気が変化するときは頭痛に悩まされるということだ。苛立ちが止まらない。痛み止をもらい家に帰ることにした。


1ルームの一人暮らしの我が家へ。


私、岩上 しのぶは今年の春で大学生活2年目を迎える。
実家から大学まで往復3時間かかるのは辛いということで一人暮らしをしている。慣れてしまえば、一人の時間も当たり前になっていく。休みともなればゆらゆらと寝ては起きてという生活をしてしまう。部屋の中をうろうろして満足している。まるで金魚鉢の中の金魚だ。