真由美:ねぇ、聞いてる?由利!由利ってば!

私:えっ?何?

真由美:ほらー聞いてないし。今年の新人はイケてるかも~!

同僚の真由美の声で我に帰った。

ここは私の勤める職場。

今は朝のミーティング。

上司のデスクまわりに見慣れない4、5人がいる。

中途採用で入社した新人だ。

新人と言っても中途採用だけあって、私より年上の方もいるようだ。

その中の一人を視界にとらえたとき、息が止まりそうになった。

あの人がいる。

明宏だ。

私は5年前に離婚し、娘と2人で暮らして来た。

その別れた相手が明宏。

彼がいる。

夫婦でいた頃、よく目にしたいつものスーツ姿。

彼はまだ私に気づいていないようだ。

真由美:ねぇ、由利はどの人がタイプ?左から2番目の彼、なかなかイケてるかもー。

私:そ、そうかな。

明宏だ。

上司:ミーティング始めるぞ。それじゃあご覧の通り、新人紹介から行くか。

上司が一人一人紹介していく。

私はずっと下を見ていた。

明宏は私に気づいただろう。

私のブース(席)はセンターの前側。気づかないわけがない。

ミーティングが終わった。

新人達は先輩に各自のブースを案内されている。

私は早々と席に着く。

パソコンを立ち上げ、仕事にかかる。

何も考えたくなかった。