「……あんた名前は?」


 気が付いたら声が出ていた。

 保健室の扉に手を掛けて、出て行こうとしていた瞬間だったから、背中に向かって言った。

 そいつは少し扉の前で立ち止まり、私の方を振り返る。


「2Aの真野光、特進クラスだよ。また来るから、……綾瀬さん」


 あ……。
 私の名前知ってるんだ。


 クスクスと笑いながらそいつは保健室から出ていった。


 なんで私の名前知ってるの。


 この時からなんとなく、そいつのことが気になっていた。