馬鹿な。

ナスティ中尉が腕利きの兵士なのは、訓練を共にした俺達だって知っている。

しかしたった一人で5匹の群れに突入するなど…!

「追うぞ、九条!」

「はい!」

俺と九条もまた、ナスティ中尉の後に続いた。

御手洗少佐達は、ナスティ中尉の独断専行に気づいていない。

フォロー役は俺達しかいなかったのだ。

…逸早く地上に降りたナスティ中尉は、地表スレスレを低空飛行する朱雀の群れと交戦している。

12ミリアサルトライフルで牽制しつつ、接近してくる朱雀に斬りかかる中尉。

だが多勢に無勢、如何にナスティ中尉といえど苦戦は免れない。

彼女の死角で、別の朱雀が嘴を大きく開く。

キィィィィィ…という収束するような音。

同時にその朱雀は、不可視の空気の刃のようなものを口から射出する!

超音波メス。

鉄骨をも鋭利に切り裂く、朱雀の遠距離攻撃だった。