俺にしてみればわからない。

俺は大尉に声をかけただけだ。

何故そんなに血相を変えて怒るのか。

怪訝な顔をする俺に気づいたのだろうか。

「フン…!」

俺を突き飛ばすように、早乙女大尉は襟を放した。

「刹那三等兵」

「はい」

彼は俺の名を呼んだきり、歯切れ悪く言いよどむ。

そして。

「貴様と九条三等兵…せいぜい用心する事だな」

理解し難い発言を残し、彼は廊下を立ち去っていった。