そして、彼女と入れ違いにダークスーツを着たサングラスの長身の男が来て、ソファーに座った。

ぼさぼさの髪に、細長い手足。

俺よりも何歳かは年上だろうが、まだ若い男だ。

「ようこそ、ファーイーストクラシック探偵事務所へ。俺が当事務所の経営者の、ケンちゃんだ」

男は言った。

(ええッ!さっき自分でケンちゃんって言うなと・・・)

流石に声には出さなかったが、心の中で突っ込む。

「あの、本日はありがとうございます。有馬裕一と申しま・・・」

俺のたどたどしい自己紹介を、“ケンちゃん”は手を上げて制止した。