T字路にさしかかったアンテナ少女は、ギャラマサのマンションがある左へ曲がったが、すぐに引き返し、身を隠すように住宅の塀に身を寄せて、バッグをひらいて何かをごそごそ探し始めた。

標的がいきなり身を翻したので、俺もヨドミちゃんも思わず歩みを止めた。

突っ立っていても目立つので、ヨドミちゃんの手を引いて近くの電柱の影に隠れた。

我ながらベタな身の隠し方だが、他に隠れる場所がないのだから仕方がない。

電柱からアンテナ少女をのぞき見ていると、少女はバッグからカチューシャを取り出すと、前髪ごと、ピンと伸びたアンテナ髪を後ろに流した。

そして、再び歩き出し、T字路を左折して行った。

「アンテナを隠した?」

俺のつぶやきを、ヨドミちゃんが「みたい」と肯定した。

アンテナ少女より少し遅れ角を曲がった俺たちは、数メートル前で、今まさにすれ違おうとする、アンテナ少女とギャラマサを発見したのだった。