職のためだ、しかたない。

俺はコーヒーを口に含んだ。

黒い液体が舌にあたり、情報が凄まじい速さで脳に伝えられる。

「・・・すげえ苦いっすね」

「だろ?残念な話なんだけど、ヨドミちゃんは先天的にコーヒーを淹れる才能がないんだよ」

オフィスの奥のほうから、

「ミルク入れても苦いよぉー・・・」

ヨドミちゃんの啜り泣きが聞こえた。

健ちゃんはスーツの内ポケットをまさぐり、小さなクスリを包みを俺に差し出した。

「仕事に支障があっても困るからな。明日からよろしくな、ユウちゃん」

それは胃薬だった。