気を取り直して、屋台を巡る。

けれど、やっぱり人は多い。

手を繋いでもらえてなかったら絶対はぐれてた。


「何食べたい?」


人込みを上手に摺り抜けて行く一臣君にあたしはうーん、と考えてみる。

ー…りんごあめ、食べたいなぁ。

でも、チョコバナナも食べたいかも。

いやいや、でもクレープも食べたい。

あ、でもでも…。


真剣に考えていると、一臣君に不意に頭を撫でられた。


ドキンッ


「………っ」


心臓がまた音を立てるのを感じながら、驚いて一臣君を見上げると、


「香澄って食べたいもんやたら悩むよな。遊園地行った時もそうだったろ」

「…う、うん」


だって色々食べたいんだもん。

けど、そんなにお腹に入らないんだよね。


「ごめんね?」

「何で謝んの。謝る必要ねーよ。真剣に考えてる香澄、可愛いし」

「……!」


ま、またこの人は。

何でこんな発言するんだろう。

勘違いしちゃうような発言が多過ぎる。

そう思いつつも、この後に来る言葉はなんとなく分かってる。


「小さい子供か、妹みたいって言うんでしょ…」

「はは、分かってんだ?」


そろそろ分かるよ。

何度もドキリとさせられて、何度もがっくりしてるんだもん。


(一臣君、あたしの事、絶対恋愛対象に見てないよね…)