「何?」
「え?う、ううん?何でもない」
いつの間にか一臣君を見つめてしまっていたらしく、一臣君はあたしを不思議そうに見下ろす。
何でもないと首を振ったあたしに一臣君はふーん、と特に気にした風も無く返した。
ー…そうだよね。
あたしが見つめたぐらいじゃあんまり気にしないよね。
ちょっとぐらい意識して欲しいなぁなんて少し思う。
暫く歩いて着いた会場は人でいっぱい。
あちこちの屋台からいい匂いがして来たり、愉し気な声が聞こえてきたり、客寄せの声も聞こえたりする。
にぎやかでなんだかワクワクしてくる。
普段人込みは好きじゃなくて、極力その中には入りたくないけれど、こう言う時は別。
「香澄、何買ってもいいけど、ヤキソバとワタアメは買うなよ?」
どのお店に行きたいかを考えていると、一臣君にそんな事を言われた。