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「お姉ちゃん!浴衣、どうかなぁ?」


一臣君からメールをもらって数日。

今日は一臣君との約束の日。


一臣君から来たメールは、簡単な挨拶と、待ち合わせ場所と待ち合わせ時間の相談だった。

ドキドキしながら返したメールに、またメールが返って来て、心臓が壊れそうになった。

たくさんの事が書かれてる訳じゃない。

ほんの数行の短いメール。

けれど、それだけで嬉しくて、それだけで舞い上がっちゃって、


「あぁ…、ドキドキする…」


お姉ちゃんに浴衣を見てもらいながら、あたしは深呼吸をした。


「うん。可愛いよ。ところで香澄」

「うん?」

「帯の直し方わかってる?」

「帯の直し方?」


知らないけど…。

首を傾げたあたしに


「脱がされた時はここをこう…」


お姉ちゃんがそんな事を言い出した。


「……えっ、ぬ、脱が…!?」

「何焦ってるの。浴衣デートと言えば…」

「違うってば!一臣君はそんなんじゃないの!」


お姉ちゃんの言いたい事が分かっちゃってあたしは真っ赤になって首を振った。


「男は浴衣見ると襲うイキモノなんだよ」


ふふん、と笑うお姉ちゃんはどうやらあたしをからかう事にしたらしい。


「一臣君は違うもん!」


それにそんな関係じゃないもん!


「拓だってそうなのに」

「勝手な想像で言うなよ…」


呆れるお兄ちゃんにお姉ちゃんはニヤニヤと含んだ笑いを浮かべた。