でも、それからどうしたらいいのかわからなくなって、結局うまく対応出来なくなって。


どうしよう、どうしようと一人わたわたと焦っていたあたしは、甲高い女の人の声を聞いた瞬間、反射的に立ち上がっていた。


「健太!どーしたの?」


「マ"マー!痛いよぉ、寒いよぉー。うぇーん」


「よしよし、もう大丈夫だから。」


そう言って背中を優しく擦るその人は、恐らく男の子のお母さんなんだろう。


しばらくそうして男の子を宥めると、今度はあたしに向き直り丁寧に頭を下げてきた。


「ご迷惑おかけしました。それから、どうもありがとうございます。このコートとマフラー、お返ししま…


「け、結構です!あたし急いでて、ダッシュしてて、なんか、なんかめちゃくちゃ熱いので。こ、コートもマフラーもいらないので貰っちゃってください!」


突然視線を向けられたあたしは、得意の人見知りをフルに発揮し、彼女がお返ししますと言い切る前に早口でまくしたて、逃げるように再び自転車に飛び乗った―…