――朝、7時。


いつものように慌てて家を出たあたしは、玄関前に置かれた自転車に飛びつくように乗ると、足をフル回転させ学校への道を急いだ。


「はっ、はっ…」


坂きつい…


そんなことを思いながら必死になっていたあたしは、突然聞こえた泣き声に足を止めた。


「うぇーん、ママ"ー」


ふっと目を向けると、雪で凍った道の端で、小さな男の子が地べたにしゃがみこんで泣いていた。


薄手の長袖にジーンズを着ているその子は、この寒い冬には明らかに不釣り合いで。


どうしたんだろうと立ち止まっていたあたしは、男の子の横にびちょびちょになったコートと手袋を確認すると慌てて駆け寄った。


「だ、だいじょ…ぶ?」


「ひっ…ふぇ…」


「さ、寒い?平気?コート、あげるね。ま、マフラーもしなね。」


声をかけたはいいけど、相変わらず泣き止む気配のないその子に、あたしは完璧にテンパってしまって。


とりあえずものすごく寒そうな格好をしているその子に身につけた防寒具をすべて押しつけた。