「……先生ほどじゃないけどね。

キャップかぶってるといつもより若く……子供っぽく見えるね、先生」

「今なんで言い直したんだよ。若く見える、でいいだろ」


頭を軽く小突く先生に、少しだけ胸を撫で下ろす。


この街は、確かに先生が育った場所だけど……。

捨てられた場所でもあるから。



先生が何を感じているのか、嫌な思いをしていないか、気になって仕方ない。


やっぱりここにくるのは断った方がよかったかな……。



「さて。どうするか」


先生が呟くように言った言葉に、あたしはその横顔を見ていた。

言葉よりも、その奥で先生が感じている事を見つけようとして。


そんなあたしを、先生が見下ろす。


「市川の事、彼女だって紹介しても問題ないと思う?」

「えっ?」