数分前までびびってた気持ちが、驚くほどに落ち着いて静かに殺気立つ。
『おまえは異常な執着を見せる』
誰に指摘されるまでもなく、そんな事自分でもよく分かってる。
今日市川が家に帰ったとしても。
すぐに戻ってくる事だって、
俺との別れを意味するものじゃない事だって、分かってる。
分かってるけど……、それを嫌だって思う気持ちをどうこうできる訳じゃない。
繋ぎとめる手段を俺が持ってるなら、俺の傍に留まらせたい。
手元から手放す事に異常なほどの恐怖感があった。
視界から消えたら、
この寮から離れたら、もう戻ってこないようなそんな不安があった。
いつか、俺を捨てた母親みたいに。
大事なモノを失わずにすむためなら……。
多分俺はどんな手段も選ばない。
例えそれが、市川の意志に反していても―――……。
自分の中に潜む狂気じみた感情がじりじりと溢れ出してくるのを感じて、眉を潜めた。