『教師と生徒』
その忌まわしい事実を意識してか、市川はめったに自分のわがままややちもちを見せない。
そんな市川から出た、「彼氏」の言葉。
「嬉しさ」って言葉では表しきれないじわじわと湧き上がる感情を、喉の奥で止めた。
「……覚悟しろよな」
食堂の端に積み上げてある新聞紙を手に取る。
そして、黒い物体に標的を定めて―――……。
「見事だったろ」
「……」
「カッコよかったろ」
「……」
「惚れ直したって言えよ」
無事退治が終わってから市川に笑顔を向ける。
俺の視線に気付きながらわざと無視を決め込む市川を、もう一押しして追いつめてやろうとした時。
ようやく市川が俺に視線を移した。