「ただいまぁ」


私は河原で一休みしてから、家に帰った。


回り道したから学校を出た時間は早くても、家にはいつもと同じくらいの時間についた。



けど、お母さんは私が草だらけなのを不信に思ったみたい。

目が怪しんでたもん。



「ねえ、華」

「なあに?」


怒られる、と思った私はお母さんと目を合わせない。

……だって、お母さん怖いし。



「なんか、華と話したくなって」


私はテーブルに向かって雑誌を読んでいたんだけど、お母さんが目の前に座ったから読むのを止めた。


なぜか、お母さんを見たら『そうしなきゃ』って感じて。

私もお母さんと話したくなった。




「今日は、華の名前の由来、話しちゃおうかな」


お母さんはテーブルにひじを立てて、落ち着いた声で語る。


その姿は、いつものお母さんとは別人に見えた。

……綺麗に見えたの。




「華って言うのはね、亡くなった父さんがつけたのよ」

「え、お父さんなの?」


私のお父さんは、私が二歳の時に亡くなったとは聞いていた。

けど、二歳だから当然記憶にお父さんはいなくて。



お母さんと二人、が私の当たり前になっていた。

私にはお父さんは存在しないものだと考えていた、



……だって、お父さんが生きていた証は無いと思ってたから。