『雪梛が心配だしさっさとストーカー捕まえよ。』
私は電話を切りせなの方を向いた。
『美月なんて〜?』
『作戦変更!!』
美月と話し合った事をせなに伝えている途中‥
―‥♪〜♪♪〜♪〜‥
『桜?
携帯鳴ってるよ』
『‥なん‥で?』
『?』
携帯の画面を見て血の気が引く。
『‥どうかしたの?』
『非通知から‥電話が‥‥』
――――
私が一番恐れていた事が起きた。
"私以外の人"に被害がいく‥
桜を巻き込みたくない。
私は桜から携帯を奪い取り電話に出た。
『もしもし。』
「あぁ!雪梛ぁ‥!
どうして自分の携帯には出ないのに‥‥‥」
『私になんの用があるんですか?
私はあんたのこと好きじゃないですから。
もう辞めてください。』
私は低いトーンで男に伝える。
しばらく間が空いて男は喋った。
「逃がさないよ。
君の声も姿も‥全部見ているんだから。」
見ている‥?
どういう意味?
「今、雪梛の犬が水色のおもちゃで遊んでるね。」
ペルツの方をゆっくりと見る。
ペルツはお気に入りの水色のおもちゃで遊んでいた。
『‥どこ‥から‥‥‥』
「ふふっ
右上だよぉ。」
右上‥?
右上にある物は‥本棚?
「あ‥‥‥‥
目が合ったぁあぁああぁあ‥―」
―ブツッ
私は堪えられなくなり電話を切った。
ガタガタと震えているのが分かる。
『桜‥今すぐ業者呼んで‥‥。』
『‥え?』
『早く!!!!!!!
盗聴器とか見つける業者呼んで!!!!!!!!』
大丈夫だと安心したのに‥‥‥‥
頭が痛い‥胃が痛い‥‥‥
息が苦しくなってきた。
この日私は追い撃ちをかけられた。
心がめちゃくちゃになっていく。
琉輝星に電話をするとすぐに来てくれた。
それから30分もしないうちに桜に頼んで来てもらった業者も来た。
―ピーッ ピーッ ピーッ
『あ、ここにもありましたね。』
機械からけたたましい電子音が鳴り響く。
‥これで盗聴器4つ目‥‥‥
盗撮するカメラも4つ見つかった。
『この前も僕達来てるのに‥
あの時は無かったんですけどねー‥‥』
確かにこの前来てもらった時には何も無かった。
あの時居たのは私、琉輝星、桜、正之、星愛ちゃん‥‥‥
この5人‥。
『おかしいなぁ‥。
機械が反応してるんだからあの時も反応するはずなのに‥‥。
もしかしたら最近付けられたかもしれませんね。
とりあえず、警察に被害届出された方がいいですね。
被害届を出したら僕達からも説明出来る事はしますから。』
お兄さん達2人は丁寧に話してくれた。
『‥‥‥ありがとうございます。』
私はお礼を言い依頼料を支払った。
『‥‥せな‥私の実家に行こう。
私の実家知ってる人はせなと琉輝星と正之だけだから大丈夫だよ。
適当に変装して友達に車借りて行こう。
父さんにも言っとくから。
琉輝星。
誰にも実家教えちゃダメだよ。
星愛にも教えちゃダメ。』
『なんで星愛も‥‥‥』
桜は呟く様に言った。
『‥星愛の顔‥バレてるから‥‥‥‥』
琉輝星は意味が分かったのか頷いた。
星愛ちゃんが後を付けられる可能性もある。
だからしばらくは私から出来るだけ遠ざけないと‥。
『ペルツは‥?』
『連れて来なよ。
置いとけないでしょ?
正之が来たらすぐに出よう。
せなウィッグあったよね?』
『一応、黒のショートと茶色のロングとかあるよ。』
私はクローゼットからウィッグを4つ出す。
黒のショート
オレンジっぽい色のショート
茶色のロング
茶色のウェーブが入ったのロング
この4つ。
『せな髪の毛ロングなのになんでウィッグ持ってんの?
しかも茶色とか染めてるの多いし。
染めたらいいじゃん。』
桜はウィッグを漁りながら言った。
『黒のロングは琉輝星のタイプだし‥。
だから今染めてないの。
でも別の髪型も見たいって言ったから‥‥‥。』
『琉輝星まじわがままじゃん!』
大笑いしながら桜は琉輝星を指差す。
『うるせぇな!』
『てかそれに答えるせなも健気!』
それを聞いて私は笑いながら反論した。
『桜だって正之に髪の毛暗い色がいいって言われて「私は正之のタイプに合わせないから」とか言ったくせに‥
ちゃっかり服装とか正之のタイプに合わせてるじゃんか!』
桜は顔が一気に赤くなる。
ツンデレだなぁ。
『とりあえず!
今日、正之6時には帰ってくるから!
帰ってきたら用意するよ!』
ぷいっと口をとがらせながらそっぽを向く桜。
『ほんと可愛いなあ。』
私は桜の頭を撫でながら笑った。
『ていうか変装ってどうすんの?
この家から出るの確実に私か桜しかいないじゃん。』
『美月に頼もうよ。
せなが美月のふりしたらいいんじゃない?』
桜は喋りながら携帯をカチカチと押した。
『あ‥美月?
ちょっと頼み事あるんだけど‥
うん‥うん‥
ほんと?
じゃあ要らない服着て来てよ。
うん、そう。
はいはーい、じゃあね〜』
携帯で誰かに電話した後、桜は私の方を見てニコッと笑った。
『たぶんOKっぽいよ』
『‥上手くいくかな?』
少しずつ不安になって来た‥。
『大丈夫。
俺らが雪梛守るから。
絶対に大丈夫だよ。』
琉輝星は私の頭を撫でながら優しく言った。
‥大丈夫だよね。
きっと大丈夫。
警察に被害届も出そう。
実家に電話して引っ越そう。
大学に行くときもコンビニにも一人で行くのは避けるし‥。
あんな奴なんかに‥‥
殺されてたまるか。
『なんなのよ!
早く"あの女"を犯すなり殺すなりしてよ!!』
僕の目の前に居る女が怒鳴りちらしている。
『僕は君の為に雪梛をあの男から守るわけじゃない。』
『何言ってんの?
さっさとあの女殺してあんたの"物"にしたらいいじゃない。』
『君こそ何を言ってるんだ。
殺すのは雪梛じゃない。
あの男を殺すんだよ。』
―ガシャン!
僕が雪梛の写真を見ながら女に話していると後ろの壁に何かがぶつかった。
『ふざけんな。
殺すのは女だよ。
お前に"情報"も色々やったし、お前の望んだ事もしただろう。
"あの人"を殺してみろ。
お前も殺してやるからな。』