僕 の 愛 し い 人 [ホラー]

『百合子!桜!』

実はとっさに左手にある階段を駆け上がる。

2階に上がってすぐ血の臭いがした。

『ゆ‥‥‥り‥‥こ‥‥‥‥』

実が見た光景は

ただ立ってニヤニヤしている男と





その目線の先にある変わり果てた妻の姿






















『百合子ぉおぉおおぉぉおぉおおぉぉおぉおおぉ!!!!!!』












―『‥‥‥‥‥‥‥‥』

正之は桜の話しを聞いて少し青ざめていた。

『‥母さんが‥‥‥
あの男に犯されてる時の‥‥‥叫び声で通報があったんだって‥‥
その後、私‥父さんに飛び付いてただ泣いた‥。』

『‥お母さんは警察に被害届は出さなかったのか?』

『出したよ!
電話が毎日鳴って‥留守電には"殺す"とか色々言われてたのに!
結局‥警察は何もしてくれなかった‥‥‥‥。』

二人はそのまま黙りこんだ。

『父さんが‥
"いつ歯車がずれたんだ‥"って母さんの命日に必ず言うの。
幸せだったのにって。』

桜は泣きながら正之の手を握りしめた。
『ねえ、琉輝星‥
桜も正之君も遅いね。』

桜と正之が雪梛の家を出てから1時間が経っていた。

『桜の親父さんにしばらく泊まるって説明してんじゃねーの?』

『‥‥‥だといいんだけど‥』

雪梛は琉輝星にもたれ掛かった。

『どうした?』

琉輝星は雪梛を後ろから抱きしめた。

『今はね‥私に電話とかだけかもしれないけど‥‥‥
もしかしたら‥‥桜にまで何かされたら‥‥‥‥‥‥』

『‥大丈夫だよ
被害届‥出しに行こう。
きっと警察も何かしてくれるからさ。』

『‥っでも!
この前のニュースの特集の女の人‥‥‥‥‥‥』


―あの女の人の名前‥‥‥
"羽川 百合子"だったよね‥?









‥‥‥‥‥桜の苗字って‥‥



    羽川じゃなかった?








『‥雪梛?
どうかした?』

琉輝星の声で我に帰る。

『え、あ‥ううん‥。
なんでもないの。』

‥同じ苗字なんていっぱい居るよね‥‥。
私の考えすぎだ‥。


ピンポーン


インターホンの音に過剰に反応する雪梛。

ビクッと飛び跳ねた雪梛を見て琉輝星は俺が出る、と言って玄関に向かった。

『せーなーちー!
せーあだよー!』

その声を聞いた琉輝星が一言。

『‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥居留守していい?』
雪梛の家に来たのは琉輝星の妹の星愛(せいあ)だった。

『星愛ちゃんどうしたの?』

『どうしたもこうしたもないよ!
るき兄から連絡きてさー
事情聞いたらじっとしてられなくて‥
そんで、せーあ来ちゃった☆』

『来ちゃった☆じゃねーよ!
お前明日も学校あんだろ!
さっさと帰れ!』

星愛の話しを聞いて苛々しながら怒鳴る琉輝星。

『まあまあ‥
星愛ちゃんも心配してくれたんだよね?』

『だってさー、せなちに何かあったら嫌だもん』

頬を膨らましながら言う星愛に雪梛は思わず笑った。

『とかなんとか言いながらお前は雪梛に会いたいだけだろ!』

『だって最近会ってなかったもん!
寂しかったのに〜』

雪梛は星愛の方を見て一気に青ざめた。
『‥どうしたの‥?
‥せなち‥‥‥』

『‥‥‥あ‥‥‥‥れ‥‥』

雪梛の指差した先には窓があった。

カーテンの隙間からは











男が中を覗いていた。









あぁ‥雪梛‥‥

なんて綺麗なんだ‥。

早く君を僕のものにしたい。

‥‥‥桜ちゃんと男が帰った。

まあ‥雪梛と僕が付き合うのも時間の問題だし、付き合ったらあの二人とも仲良くしないとな。

それよりも

早く帰れよ!

そこの男!




‥‥雪梛は‥‥‥‥‥僕のものだぞ!



雪梛‥なんで‥‥‥‥

なんでその男にキスをする!

なんで抱き着く!

なんで‥‥‥








なんで二人の体が絡み合う‥‥‥!






殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

あの男を‥殺したい!!!!!!!!

百合子の時もそうだった!!!!!!!!

男を殺せばよかったんだ!!!!!!

僕に発煙筒を投げつけて‥!

何度も邪魔しやがって!!!!!!!!

あげくの果てには百合子を連れて引っ越しやがった!!!!!!!

ちくしょう!!!!!!!!!!!!!

今回は絶対‥‥絶対‥!
















男 を 殺 し て や る