桜を抱きしめ百合子は二階の寝室まで階段を駆け上がった。

ベッドの上に桜を座らせ窓に掛かっているカーテンの隙間からそっと玄関先を見る。

『‥‥‥‥誰?』

全く知らない人が"この扉は開いて当たり前"と言っているかのように立っていた。

『あなたなんて入れないわよ!』

寝室にある電話を手にとり実の職場に電話をかける。

プルルルルルル プルルルルルル

『もしもし』

『もしもし実さん?!
百合子です!』

百合子は早口で事情を説明した。

『わかった!
すぐに行くから!
そのまま寝室から出るんじゃないぞ!
わかったな!』

それだけ言われると電話はきれた。

百合子は受話器を置きもう一度カーテンの隙間から外を除く。

‥まだいる
早く来てよ‥‥