朝、実は起きると寝室を出てリビングへ向かった。

『おはよう、百合子。』

『おはよう。
朝ごはん出来てるわよ。』

長い黒髪を一つに束ねてキッチンに立っている百合子は朝から忙しそうに実の弁当におかずを詰めていた。

『‥なあ、百合子?』

椅子に座り実は百合子の後ろ姿に話しかける。

『なぁに?』

『俺の事愛してるか?』

百合子は手に箸を持ちながらびっくりした顔をする。

『なんだよ』

『実さん‥最近そういう事聞かないし言わなかったから‥‥。
いきなりどうしたの?』

『‥別にいいだろ。たまには。
夫婦なんだし』

実は恥ずかしくなりテレビに顔を向けた。

パタパタと百合子がスリッパで音をたてながら実に近づく。

実の後ろに立ち、百合子はトントンと実の肩を突いた。

『なに?』

実が振り向くと笑顔の百合子がいる。

『愛してるわ。』

百合子は実に顔を近づけキスをした。

百合子の匂いがふわっと漂う。

実は百合子の額に自分の額をくっつけて囁いた。

『俺も愛してるよ。』