僕 の 愛 し い 人 [ホラー]

『安心して。
ガーデニングではないから。』

桜は笑いながら美月に言った後、説明を始めた。

『美月は別に何もしなくていいの。
ただ、その服をせなに着さして。
その後2時間か3時間ぐらいしたら帰って。
せなにも要らない服用意してもらっといたから。』

『‥なんのために?』

『せなをここから逃がす為に。』

その言葉に全員が黙る。

『二人とも‥頼む。』

琉輝星が頭を下げる。

‥私の為に‥‥‥。

『ちょっ‥琉輝星!
頭上げろよ!』

『そうだよ!琉輝星!
それくらいするからさ!』

二人は頭を下げる琉輝星を宥める。

『雪梛の為だもん♪
私が出来ること何でもするよ。』

『‥ありがとう。』

その言葉に私は本当に心から感謝した。
『ねぇ桜。
正之さんは?』

『正之は先輩の車借りに行ってるよ。
正之の車も琉輝星の車もバレてるかもしれないからね。』

美月は納得したように頷く。

『じゃあ雪梛。
着替えますか。』

美月は立ち上がり脱衣所まで歩いて行く。

『そうだね‥。』

私も返事をして脱衣所に向かう。

『雪梛‥ちょっと痩せた?』

脱衣所で服を脱いだ私を見て美月は聞いてきた。

『え‥どうだろ?
よく分かんないや。』

痩せたとしても1、2kgぐらいなのに。

『私、そんなに痩せた?』

『うん。
ちゃんと食べてる?』

『‥‥‥‥』

正直そんなに食べてない。

だって‥強がっていても本当は怖い。
『まあ、心配しなさんな!
琉輝星君も桜も居るしさ。
もちろん私も居るよ。
何かあったら私達が力になってあげるから。』

『‥美月。
ありがとう。』

涙が出そうになる。

どうして皆こんなに優しいんだろう?

『そのかわり!
ストーカー問題解決したら飲みに行こうね。
雪梛のおごりで♪』

美月の言葉に私は思わず吹き出す。

『やっと笑った〜!
それじゃ、さっさと着替えよ。』

二人の服を交換する。

これで私はバレずに逃げられるのかな?

『あ、雪梛ごめん。
脇汗やばい。
服すごい濡れてる。
脇の所だけ。』

‥‥‥‥‥緊張感ないなー‥
雪梛‥

カメラとか取り外したから君が全然見えないよ‥。

寂しすぎて君の家の前まで来てしまったよ?

今日こそ君は家に上げてくれるかな?

恥ずかしがってばかりじゃ、どうにもならないのに。

全く‥可愛いなあ。

ふふふ‥‥‥




僕の雪梛‥‥‥。





離したくない。




あ‥‥

さっき雪梛の家に入った女の子が帰っていく。

ふふ‥‥

"あの桜ちゃん"も一緒だ。

‥‥琉輝星‥か。

どこがいいんだか。

しかし‥‥

"あの桜ちゃん"は皆の前では猫を被っているんだな。

僕の前ではあんなに‥ふふふ。

どうして桜は正之とか言う奴と付き合っているんだ?

‥あいつは確か‥‥‥‥

ん?車‥‥

誰の車だ?

‥まぁいいさ。

雪梛は‥

僕の雪梛はあの部屋に居るんだから。

桜もあの野郎も知らない雪梛の女友達も‥

関係ない。

早く帰れよ。
桜達が帰って2時間半が経った。


―ガチャ


あ、玄関の鍵が開い‥‥‥‥―
















―‥え?













どうして‥

どうして雪梛の友達がまた出てくる?!

どうして!

なんで!

さっき桜達と‥‥‥

‥‥まさか‥

あの時出て行ったのが雪梛‥?

どうして‥‥‥

何故あの友達のフリをして‥

この家から出て行ったんだ‥?

なんで‥‥‥‥










僕の愛に答えてくれないんだ




そうだ‥‥携帯

いつもの様に非通知設定にして電話をかける

雪梛は優しいからかけ直してしまうだろ?

雪梛の負担になりたくない。


―プップップップッ‥

おかけになった電話番号は、現在使われておりません。


‥‥‥使われて‥ない?

どうして!

そうだ‥

"あいつ"なら分かるはずだ。

電話帳を開きあの女に電話をかける。

「もしもし」

『おい!
雪梛の電話番号が変わったじゃないか!
早く教えろ!』

「‥うるせぇんだよ!!!!!!!!」

?!

「誰にも番号教えてないから今お前に教えたら怪しまれるだろ!!!!!!!
いちいちかけてくるんじゃねぇよ!!!!!!!!!!!!!!!!」

―ガチャン! ツーツーツーツーツー‥

‥‥どういうことだ。

"こいつ"にも教えないだなんて‥‥。
『上手くいったね♪
携帯も変えたし!
しばらくは大丈夫そうだね!』

『ほんと‥
こんな上手くいくなんて。』

私は茶色のウィッグを外しながら桜に答える。

『景一さんもありがとうございました。』

『全然かまわんよ〜♪
市民を守る正義の味方が警察やねんから!
任しとき!』

この人は"東 景一"さん(ひがし けいいち)

正之の上司。

つまり警官だ。

関西弁なのは前まで大阪に住んでいたかららしい。

『それよりバレてねぇかな?
車に乗ったのが雪梛と桜と俺だって。』

『大丈夫だろう。
車も東先輩の物だ。
それに、桜の実家を知っているのはここに居る5人だけ。
バレやしない。』

家を出た時、琉輝星と桜に私を隠してもらっていた。

サングラスをかけてウィッグを付け車に乗り込みそのまま携帯を変えに行った。

携帯の番号を教えたのは、琉輝星、桜、正之、景一さんの4人。