次の日──陽はやや真上に昇る昼近く。

「……大丈夫?」

 少年は、恐る恐る助手席の窓から外をのぞき込んだ。

 同じ場所に長居するのは得策ではないため、ベリルは確認して静かに車を発進させる。

 着信を震えて知らせている携帯をカーナビに差し込む。

<準備出来たぞ>

 知らない男の声が車内に響いた。

 威勢の良い20代と思われる男の声だ。

「すまんな」

「? なんの準備?」

「私のトラックは知れてしまっているのでね」

 しばらく走ったピックアップトラックは、再び人気(ひとけ)の無い薄暗い路地に滑り込む。

「!」

 そこには、濃い紫のスポーツカーが駐まっていた。

 艶のある不思議な色合いで、少年は初めて見る輝きに目を見張る。

「格好良いだろう?」

 少年に薄笑いを浮かべてベリルは発した。