町の中心部に戻る途中──

「!」

 バックミラーに映っている黒いセダンが、つかず離れずぴたりと後ろをついてきていた。

「面倒だな」

「え?」

 この時間が惜しい……ベリルはわざと車を路地裏に向けると、途端に後ろの車がアクセル全開で近づいてきた。

「おっ、おじさん!」

「喋ると舌を噛むぞ」

 発して、唇をペロリと舐めると攻撃を加えてくる車の衝撃をなるべく和らげるようにハンドルをきる。

「!」

 狭い路地を走り抜けた先は行き止まりだった。

 ベリルはブレーキ音を響かせて回転し、車の顔が相手の車に向けられて止まる。