風が夜を引き連れて幕を下ろし、不格好な顔を隠してくれた。
それでも空は明るく、海は更に濃度を深め、徐々にそれは重なり合いながら紺色の一面が広がる。

そんな景色を見てるうちに足元が救われそうな気がして、思わず隣に居たリリーの手を握った。




「気にすんなって」


それはリリーに言ってるようで、自分に言い聞かせてるようなもんだった。
全ての原因は自分にあるのに、勇気がなかっただけ。

彼女には酷い事をしたし、リリーにも可哀相な事をさせてるけど。
それはもう、どうしようもない事なんだ。

それが俺のやり方なんだ。


そんな事を言ったら驚くだろうから言わないけれど…




俺は小さな手を引いて車に戻り、リリーを助手席に乗せ、車に乗り込み走らせる。
家まで向かう途中、ドラッグストアにリリーを連れて寄り道をし、自分用のヘアカラーとリリー用のヘアカラーをカゴに入れた。

それから必要な物を色々とカゴに入れるのをリリーは黙ってみていたが、会計を済ませる時、なぜか離れたレジのほうに立っている。
気になって見ていると、目が合った途端に逸らされてしまった。


なんとなく頭にきて
「何買ったの?」と怒ったように訊いたら、「自分に必要な物」と同じように怒った声で返された。


なんだ、それ。

そう言いたかったけど、止めて置いた。