「俺だってまだ若いんだ。人の色恋にとやかく言えるような身じゃない。

ちんぷな言葉なんて言われたくないだろ?」



静かに、佐野先生の声があたしの内に響く。



その通りだ。


下手ななぐさめはいらない。


「それに、俺に話したことで頭が整理できて、もう落ち着いたんじゃないか?」



あたしは瞳を見開いた。


あれだけ不安定だった心が嘘みたいに落ち着いてる。


今なら安藤先生とも話せる気がする。



「先生の言う通りだよ。あたし、次は逃げない」



心を決めた。



「ありがとう、佐野先生」


残りのコーヒーを一気に飲んで立ち上がった。



すると、佐野先生はにっこりと笑った。


「何か忘れてない?」


「え?」