「別れよう」
本当に突然だった。
先生が悩んでいたなんて、自分のことで精一杯でまったく気づかなかった。
だから、引き留めることもできなくて。
安藤先生とデートのときに決まって待ち合わせしていた、地元から遠く離れた喫茶店で、
あたしたちは別れた。
こういう時、店内にかかっていた曲が忘れられないって聞くけど、
何も考えられなくて、音なんて耳に入らなかった。
それどころか、どうやって家に帰ったのかも、この時のことは一切、覚えていなかった。
喫茶店を出た後、未成年だというのに、飲んだお酒のせいかもしれない。
やけ酒って言葉があるくらいだから、安藤先生の悲しい笑顔を忘れられるかと思ったんだ。
それなのに、どうでもいいことばかり忘れて、その笑顔は忘れられなかった。
こうして、あたしの初恋はあっけなく終わった。