宿泊研修から2カ月近く経った六月のある朝のこと。
「おはようございます、佐野先生」
今日も佐野先生と一緒に登校していた。
「お~、おはよう」
佐野先生はアクビをしながら答えた。
「すごく眠そうですね」
「昨日、先生の歓送迎会があってさ」
あたしたちはホームへと向かいながら話をした。
宿泊研修があった頃は、先生との登校は気まずくて、ほとんど会話もなかったけど、
さすがに今は普通に話せるようになっている。
「歓送迎会? 六月にですか?」
「ほら、現国の進藤(しんどう)先生、今日から産休だろ。
で、一時のお別れと少し気の早いおめでとう会をしようってことになったんだ。
そしたらちょうど、産休代理の先生があいさつに来たから、その先生も誘って歓迎会も兼ねたわけ」