大丈夫。
あたしのお尻を触る手をつかめば、間違いなく痴漢を警察に突き出せるはず。
この地獄から開放される。
あたしがやらなきゃ。
でないと何も変わらない。
意を決して右手を痴漢の方へやろうとした、その時、
「おっさん、いい加減にしなよ。いつまでその子の尻触ってる気?」
――救いの声が聞こえた。
誰…?
声のした方を見上げると、
背の高い若そうな男がスーツ姿の40代の男の右手首をつかんで立っていた。
若そうって言っても、どう見てもあたしより年上だけど。
制服でもスーツでもないから大学生かな。
この人が助けてくれた…?
こんな時になんだけど、カッコイイ人に助けてもらえるなんて、ちょっとラッキーかも。