頭のなかが真っ白で、体に力が入らないでいると、簡単に唇をこじあけられる。
「…んッ…やぁ…」
その感触にハッとして、彼の胸を押して離れようとするけど、ビクともしない。
「…ふ…ッ…」
それは、とても長く、深く。
ここが電車の中で人に見られてることも、何も考えられない。
解放された頃には立つのがやっとな状態だった。
鷹井くんに腰を支えられ、彼にもたれかかるようにして、
かろうじて立っていた。
「それじゃ、嫌がってるようには見えないよ。その声にあおられる」
その言葉に腹が立ったけど、あたしは彼の瞳を見て、何も言えなくなった。
言葉から想像できないほど、真剣で、それでいて悲しそうな瞳をしていたからだ。
「鷹井くん…?」