あたしはちらっと、その『距離』ってヤツを見る。
あたしたちが座っているのは教官室にあるふたりがけのソファーだ。
佐野先生は普通に座っていて、あたしは――今にもひじかけの上に乗っかりそうなほど端に寄っている。
「普通に座りなよ。何か傷つくんだけど」
「…誰のせいですか」
あたしはボソッと低い声でつぶやいた。
すると突然、佐野先生が意地悪そうな笑みを浮かべた。
「あ、もしかして期待している?」
「してない!! キスなんてしてほしくないし!!」
あたしは思わず話に食いついていた。
「あれぇ? 俺はキスを期待してるかなんて言ってないんだけどな」
「………!!」
ヤラれた!!
「あたしはッ…んン…!?」