急に佐野先生に話しかけられて、びっくりしたあたしは、またボールを落としてしまった。
「注意力散漫。ボールをうまく返せないだけなら、フォームを教えてどうにかなるけど、その前の問題って感じだよな」
たしかに、あたしは自分でも認めるほどの運動音痴。
でも、ボールを顔に当てるなんて酷いことになっているのは、一体誰のせいよ~!!
心の中で佐野先生への文句を言いながら練習をして、
とうとう授業終了のチャイムがなってしまった。
ショートホームルームも終わり、放課後。
体育教官室にはホッチキスを留める音が響いていた。
ううん、音だけがって言った方がいいのかもしれない。
ふたりとも、口を開かないから。
「…………」
「…………」
「…その微妙な距離はどうにかならないか?」
先に口を開いたのは佐野先生だった。