「まぁ、戻ってきたくなったら、いつでもおいで」


垂れた右目をつぶってウィンクしてみせる安藤先生にプッと吹き出しかけた時、

誰かに優しく包み込まれた。



「一生戻らないから」



聞こえたその声は、あたしの大好きな声。



「あなた達、外なんだからもうちょっと人目を気にしなさいよね」


樋渡さんに呆れたように言われて、祐輔はおとなしく離れた。



本当にあたし達は今まで運に助けられた気がする。



何度も学校でキスをした。


好きだとも言われた。


あたしも言った。



それでも、何とかバレずに済んだのは、きっと運がよかったから。



だけど、これからは――運じゃない。



ふたりでふたりのこれからを守ってみせる。



「行こうか」