「…なぁ、そんなに泣いてばかりなら、オレにしておきなよ。オレなら泣かせない。

――これを受け取ってほしい」



安藤先生は穏やかな声でささやくと、ポケットからむき出しのゴールドのリングを差し出した。


その輝きを見て、あたしの頭はグラグラ揺れた。



どうして?


少なくとも安藤先生に対する答えなんて決まっていたはずなのに。



もう何もわからない。


これを受け取れば楽になれる?



甘い誘惑だけが、あたしの思考を占領していた。



あたしの手がリングへと伸びていく。


触れる直前、廊下に「バッカじゃないの!?」という大きくて甲高い声が響いた。



驚いて声のした方を見ると、樋渡さんが仁王立ちしていた。



「…樋…渡さん?」


彼女はあたしの予想とは大きく外れた顔をしていた。