「手作りはダメ! 慶太はよく家に上がってくるから、きっと作ってるとこ見られちゃうよ」
「そっか。あ、これは? おいしそう!」
あたしは小さなハート形のチョコがたくさん入ってるヤツを指差した。
「え~と、何なに。コーヒーにからめたナッツが入ってるの? おいしそう!」
説明文を読んで、笑顔になったあゆみちゃんが、試食のチョコをひとつ口に入れた。
続けてあたしも食べてみると、口の中にチョコの甘さとコーヒーのほろ苦さ、ナッツの味が広がった。
「おいしいね! コレにする!」
「決まってよかったね」
「うん! あ、そういえば千沙ちゃんは誰かにあげないの?」
「う…うん」
一瞬、佐野先生の顔が浮かんだ。
あげられないのに、未練がましくチョコを見てしまう。
そんなあたしに、あゆみちゃんは目ざとく気づいた。
「あ、本当は誰かあげたい人いるんでしょう? 誰、誰!?」